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花弁に一筆、

2024 2/13
pokemon
2024-02-13

 ペパーはアカデミー帰りに、チャンプルタウンのスーパーマーケットに立ち寄っていた。今日の夕飯をどうするか考えながら、スーパーマーケットの什器を覗いては歩いて、覗いては歩いてを繰り返して、ぐるっと一周しても夕飯の内容が決まらなかった。常備菜の焼き野菜のマリネを使うとしても、主役となるものを肉にするか野菜にするかが問題だ。ちなみに昨日は魚だった。
 昨日の夕飯が魚だったから、今日は肉にしてもいい気はするのだが、肉を見てもぴんとこないのだ。なんというか、肉料理を作りたい気持ちではないのかもしれない。
 だったら、魚にしようと思って製鮮魚を見ても、どうにも今ひとついいものが浮かばない。難しい問題だ……そう思っていたとき、店の奥から、がらがらと食材を載せたカートが出てくる。そこに乗っていたのは、イカだった。
 それを見たペパーはぴん、ときた。今日はパエリアだ。大きなフライパンにめいっぱい作ってしまおう。そうと決まると、白身魚やあさりをかごに入れていく。米はコメドコロ(おいしい米の産地のことをいうらしい)シンオウ地方産のものがある。シンオウ地方の米がパエリアに向いているわけではないのだが(むしろ、シンオウ地方の米はおにぎりに向いている、とペパーは思っている)あるものを使ってしまおうというのがペパーの考えだ。
 うきうきとたくさんの魚貝類を買い込んだ彼は、そのままアオキと同棲生活を送る一軒家に戻る。しばらく前に建てたばかりの、小さな庭付きの三階までぶち抜きの鳥ポケモンもにっこりな我が家で、今日は留守番らしく、庭先にいたカラミンゴがぐる、と首を回してペパーを見てくる。ぎょっとする光景にもなれたもので、驚くこともなく、ただいま、とカラミンゴの顎の下をなでてやる。同じように留守番をしていたらしいウォーグルが家の屋根の上を旋回している。それを見上げて確認したペパーは、おおーいと手を振って、自身の帰宅を告げる。気がついたらしいウォーグルは、すぅっと降りてくるとペパーの前で胸を張って翼を折りたたむ。まるで、今日も我が家を守りましたよ、と言わんばかりだ。
 えらいえらい、とそんな彼を褒めちぎりってから、ペパーもポケモンを庭先に出してやる。我先にとかけだしていくヨクバリスと、お気に入りの小さな池に埋まりにいくパルシェンを見送り、背の高いキョジオーンも満足の高さ(なんせ鳥ポケモンにあわせて三階までぶち抜いたリビングだ)のリビングダイニングに向かう。食材を取り出していると、がちゃん、と扉が開かれる音がする。鍵をかけたはずだし、そうでなくても不審者であれば外で遊んでいるポケモンたちが気がつくはずだ、と眉根をしかめてペパーは玄関に向かう。
 そこにいたのは、ヨクバリスとカラミンゴに絡みつかれているアオキだった。おかえりちゃん、と鞄を受け取ったペパーは、ヨクバリスをなでる手に小さな花束が握られていることに気がつく。今日はなんだったか、とカレンダーのイベント内容を思い出すが、特に何でもない平日のはずだ。

「これは、その……あなたに」
「オレに?」
「ええ。バレンタインですので。あなたに似合いそうな色のものを選んできました……花は、嫌いではなかったと思ったのですが」
「家が明るくなるから好きだぜ? ああ、そうか。今日はバレンタインだったか……って、あっ!」
「どうしました?」
「オレ、なんも用意してねえ……」

 バレンタインの存在を思い出したペパーは、何も用意していないことを思い出す。イベントごとに興味がなさ過ぎるというのも問題だ、と思いつつも、数日前からこういうことに食いついてくるハルトも食いついてこなかったというのもある。他人のせいにはしたくはないが、忘れていたのは事実なのもある。だから、ペパーはごめん、と素直に謝罪をすると、いつも料理を作ってくれているので、むしろ自分が贈り物をしないといけないんですよ、とアオキは無表情を少しだけ緩める。
 いつもより腕によりをかけるから期待しててくれよ、と張り切りだすペパーに、いつもよりおいしいご飯が食べられることに、アオキは内心小躍りする。こんな小さな黄色とオレンジばかりの花束でいつもよりおいしいご飯が手に入るのだから、バレンタイン以外でもたまには花を持って帰るのはいいのかもしれない、と少々打算的なことを考え始める。
 そうでなくても、花につけられた言葉を渡して満足している自分は多少なりいるのはたしかだ、とアオキは思う。中年ともなると、言葉にして愛を伝えられなくなるものだから、花に託してしまうのは許してほしい。そういうちょっとしたわがままも含めている。
 鞄をスコヴィランに託したペパーは、ジャケットをオドリドリに託したアオキとともにリビングダイニングに向かう。

「今日はパエリアなんだ」
「いいですね。米と魚のコラボ、素晴らしいと思います」
「へへ。あ、そうだ。味付けカントー風にしようかな」
「それだと雑炊に近くなるんでしょうか……」
「ゾースイ?」
「前に鍋をしたときに、ごはんと卵を入れて最後にシメたじゃないですか。あれです」
「ああ! あれ、めちゃくちゃおいしかったんだよなー」

 また食べたくなってきたな、ナベ。
 明日はもっと寒いそうですから、明日ナベにするのもいいですね。
 そんな話をしながら、ペパーはイカの皮をむいて、輪切りにし始めた。手際よく進んでいく調理に、アオキは手伝うことはありますか、と申し出ることにしたのだが、アオキさんはお仕事でおつかれちゃんだから、とキッチンから追い出されてしまう。
 しかたなく、アオキは自分が買ってきた黄色とオレンジのミニブーケを花瓶に生けるべく、家のどこかにあるであろう花瓶を探してきますね、とペパーに声をかけることにするのだった。

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  • 花より水よりごはんより
  • ショコラ色に染めて

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