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朝食-4

2023 10/18
pokemon 実は既婚者だった話
2023-10-18

 朝。ペパーは見慣れない天井にぎょっとして、横を向いて床が近いことにもう一度驚いた。それから、そういえばアオキの実家に来ているんだった、と思い出す。慣れないと眠るのが大変だろうけれど、と並べて敷かれた布団に二人で入って、眠くなるまで今日――昨晩の感想をひたすら話しているうちに、すっかり寝落ちしてしまったらしい。
 よく寝た、と目をこすってペパーは起き上がる。まだ眠っているアオキを起こさないようにそっと布団から抜け出せば、起きてきたマフィティフが静かに隣にやってくる。彼の首元をぐいぐいと撫でて朝の挨拶をすると、そのままペパーは仏間をあとにする。

「まだ朝早いから静かだな」
「ばう」

 まだ誰も起きてきていない家の中を静かに移動して、ペパーは歯を磨いて顔を洗う。ぺたぺたと小さく足音を立てながら仏間に戻り、ゆるめのブラウンとベージュのツートーンのTシャツと、黒いサルエルパンツに着替える。

「……朝飯作ってもいいと思うか?」
「くぅん?」
「いや、だってよぉ……勝手にキッチン触るのって、嫌な人は嫌だよな……」
「ばふ」
「でもよぉ、やっぱりオレの飯も食べてみてほしいって言うか……」
 
 勝手にキッチンを使わせてもらうのは悪いという考えと、一宿一飯の恩義っていうしな、という考えと、自分の飯を食って欲しいという考えが三つ巴の戦いを繰り広げて、勝利したのは後者二つの考えだった。
 うんうんと悩んでいたペパーは、あとでトモミさん――お母さんと呼ぶと目に見えて嬉しそうにするものだから、すっかりその言葉で呼んでしまうようになった彼女に、勝手に使わせてもらったことを謝ろう、と考えてキッチンに足を踏み入れる。
 寝る前に食器や調理器具は片付けたらしく、すっきりとしていながら、使い込まれたキッチン周りを見ながら、ペパーは棚の扉を開いて中を改める。

「えーっと……油はここ。包丁とまな板はここか……野菜室はこっちで……あ、これ賞味期限が近いから使わせて貰おう……」

 ぶつぶつ言いながら、冷蔵庫から生ハムのパックとトマト、レタスを拝借し、包装紙に包まれたままのバゲットを手に取る。トマトを薄くスライスして、バゲットを食べやすい大きさに切り分ける。
 アオキとその家族分と自分を合わせた人数分になるように切り分けてしまうと、バゲットがなくなってしまう。大食漢のアオキ(昨晩、やたらめったらな量だった夕食を、なんだかんだで一番食べていた。そして、そのときにアオキだけがよく食べることをペパーは知ることとなった)には物足りない量になるな、と思ってから、オムレツでも作るか、と卵をいくつかボウルに入れる。

「よし……バゲットに切り込みを入れて……と」
 
 切り分けたバゲットに切り込みをいれて、そこにレタスとトマト、生ハムを挟んでいく。スライスチーズもあったから、ついでにそこにはさんでしまう。ボリュームたっぷりのバゲットサンドを食器棚から拝借した大皿に盛り付け、ペパーはボウルに入れた卵を次々に割っていく。フライパンにバターを入れてあたためながら、たっぷりの卵に塩を入れて、しっかりと卵を溶きほぐす。

「そろそろだな」
 
 フライパンが温まった頃、ペパーは少し煩くなるがぱちんと換気扇を回す。
 フライパンにしっかりと溶いた卵を適量流し込み、冷凍庫に入っていたピザ用チーズの袋を閉めていた洗濯ばさみを外す。卵が半熟のスクランブル状になった頃合いを見計らって、チーズをどばっ、と放り込む。菜箸でくるくるかき混ぜながらオムレツの形を整える。
 それを皿に乗せて、またフライパンに残った卵を流し込む。大きめのフライパンで作るのもあるが、多めの卵を溶いたから、オムレツも大きめのものを二つだ。普段ならばしないが、今回はどれぐらい朝から食べるのか予想がつかないから、複数人でオムレツをシェアしてもらうことにしたのだ。
 手際よく大きなチーズオムレツを作り終え、ダイニングテーブルに食事を並べるか迷ってから、ペパーは起きてきたキョジオーンとリククラゲにローテーブルに食事を並べて欲しいと告げる。キョジオーンもリククラゲもお手伝いができることが嬉しいのか、腕や触手を伸ばして皿を支えて運び始める。

「ついでにもう少し作っちまうか!」
 
 それを見守りながら、ペパーは消費期限が迫っているクラッカーをあけると、同じように期限が迫っているスモークサーモンとバゲットサンドのあまりの生ハムを並べる。
 微妙に残っていたクリームチーズに、冷蔵庫から引っ張り出した緑色のチューブ――スマホロトムで確認したが、間違いなく本わさびと書かれているそれを混ぜ合わせると、クラッカーの上に乗せる。わさびとクリームチーズを混ぜたそれの上に、生ハムやスモークサーモンを並べていると、トモミがふくよかな体を揺らしてリビングの扉を開けてきた。

『あらあらあら! ペパーちゃん、朝早いのねえ! まだ寝ていていいのよ』
「あ、『おはよう』ええと、『お母さん』えっと『キッチン、借りた』」
『いいわよぉ。好きに使ってちょうだいよ。って、やだやだ! おいしそうなごはんができてるじゃないの!』
『昨日のごはん、すごくおいしかったから、お礼に』
『お礼だなんて! 別にいいのよ。わたしがしたくてしていただけなんだから。やだわぁ、こんなおしゃれな朝ごはんなんてはじめてだわ!』

 これなんて、どうやって作るの。そうスモークサーモンとわさびクリームチーズのクラッカーを食べるトモミに、わさびとクリームチーズを混ぜただけ、とペパーは作り方を教える。
 お手軽ねえ、とトモミが感動していると、ぞくぞくとアオキの家族が起きてくる。一番最後にやってきたアオミにいたっては、ポケスタ映えじゃん、と感動してスマホロトムで何枚も撮影するほどだった。
 おのおのがローテーブルに着きはじめると、手伝ってくれたキョジオーンとリククラゲに朝ごはんにクラッカーとポケモンフーズの入った皿を渡す。邪魔になるのが分かっているのか、二匹はのそのそとリビングの掃き出し窓から庭先に出ると、のんびりと食事を始める。他のペパーとアオキや家族のポケモン達もおのおのフーズを家の外や中で食べ始める。
 チーズオムレツをスプーンで食べたい分だけ掬っているタツヤは、すげーとろとろしてる、と感動している。家でこんなの食ったことない、と満面の笑顔で食べ始めるほどだ。

『これ、父さんも作ってよ!』
『ええ!? えーと……すまない、ペパーくん。レシピを……教えてもらえるかな……?』
「レシピを教えて欲しいそうですが……」
『あ、あたしも! こっちのクラッカーのやつ!』
「ええ!? いや、別にそれは良いけど……オレ、カントーの言葉はまだ勉強中で書けないちゃんだぜ?」
「なら、パルデア語で書いてください。それを自分が翻訳するので」
「それなら……わかった。あとで書き起こしておくから」
「ありがとうございます。『書き起こしてくれるそうですよ』」

 ペパーがレシピを書き起こしてくれることと、それをアオキが翻訳することを告げれば、タツヤは目に見えてやったー、と大喜びをする。チーズ料理が特に好きらしく、チーズたっぷりのオムレツの半分は彼の胃に収まっている。逆にトマトは好きではないのか、しれっとアオキにトマトだけ抜いて押し付けていたが。
 バゲットサンドを頬張りながら、ペパーはこのぐらいの料理で喜んでくれるなら、もっと料理を作ってもいいかな、と考える。ちょっとした料理で、こんなに喜ばれるのは初めての経験で、すこしばかりくすぐったいが。
 誰かが付けた朝の情報番組が新しくできたヤマブキシティのカフェの特集を流しているのを聞きながら、アオミはアオキがひとりでしれっとチーズオムレツをほとんど食べようとしていることに気がつく。
 こら、とチーズオムレツを独り占めするな、とアオミがいえば、ひとつ余るでしょう、とアオキも負けじと言い返す。

『余ってから食べなさいよ、余ってから』
『温かいうちに食べたいじゃないですか。おいしい料理なら、なおのこと。それに、皆そんなに食べられないでしょう、朝から』
『ああ、もう……分かったわよ』

 生ハムのバゲットサンドだけでも正直腹が膨れる量だったのもあり、アオミはアオキの好きにさせる。その隣で、ユウイチが零れないように慎重にかぶりつくのを見て、ペパーはこっちのパンは柔らかい物や菓子パンと言われるものが多いと聞いたことを思い出す。そういえば、まだこちらのパンを食べたことがない。

「えっと、『オレ、こっちのパン、食べてみたい』」
『カントーのパン? 普通にどこでもあるパンだと思うけどな……』
『カントーのパンというよりは、菓子パンが気になっているって言ってましたよ』菓子パン、気になってましたよね」
「そう! それ! あんぱん? とか、あとメロンパン? ってやつとか……パルデアじゃ見たことないし」
『あんぱんとメロンパンが食べたいとのことです。パルデアでは食べる機会が無いので……』
『へえ……なら、ホリハタさんちのパン屋さんはどうだ? あそこ、いろいろなパンがあるし』
『ホリハタさんちもいいけど、リニア駅前商店街のパン屋さんだっておいしいわよ』
『両方食べれば良いんだよ、な、ペパー兄ちゃん!』
『……どっちにするか、本人達が選ぶべきだ』
『そうよお。タツヤの言うとおり、二軒いけばいいのよ!』

 やいのやいのと盛り上がり始めるアオキの家族達に、ペパーはどこのパン屋のパンがうまいんだ、とアオキに尋ねる。アオキは少し考えるつもりで――動きがぴったりと止まる。あ、とペパーが思ったときにはもう遅くて、すっかり彼の長考癖が発動しているのだった。
 すっかり思索の海に潜っているアオキに、まあいっか、とペパーは自分の分のバゲットサンドにかぶりつくことにした。生ハムの塩気がなんともマッチしておいしいが、黒胡椒かミニーブのオイルをかけたらもっとうまくなりそうだな、と咀嚼しながら考えるのだった。
 その間も結局これだという、おすすめパン屋は決まらなかった。結局、今日のアオキたちの昼ごはんは、話題に上がったパン屋に各々向かって、気に入ったものが食台に並ぶという、パンバイキングになったのだけれども、またそれは別のお話である。

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