ハリエンジュの赤い星– category –
美男美女のゆるやかな現代ファンタジー
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アイス・イン・ザ・スカイブルー
汗が吹き出して止まらない。猛暑日だとか酷暑日だとか、とにかくひどい夏の暑さに優は左目を伏せて汗をタオルハンカチで拭う。目に染みる汗は、いくら拭いても止まりそうにない。 隣に立つ男・千種川雅貴もまた、顔の横を流れる汗をガーゼ生地のハンカ... -
チョコレート・リップサービス
うちのクラスにはチョコレートを山のように受け取る女がいる。 下手な男よりも背が高いその女の名前は栫井優(かこい・ゆう)といった。ゆるくうねったグレイアッシュのロングヘアは、毛先にスカイブルーのエッシュが入っている。髪色に派手な青いネイ... -
世界の隠し事
その展覧会はいわゆる「用途不明のもの」を収集したものだった。それは雑多に収集された、古今東西の摩訶不思議なものの展覧会だった。 優はその展覧会に千種川に連れられてきたのだが、どういう理由があって彼がここに彼女を連れてきたのかがわからな... -
グリッター色の魔法(下)
「それで、この間言ってた結節点の結晶、ってなんなわけよ」「我々の世界でエネルギーとして利用されている元素ですね。結晶化すると膨大なエネルギーを含んでいるので、扱いが難しいのですが、人為的に結晶化させ、エネルギーとしています」「へえ……そん... -
グリッター色の魔法(上)
二人は薄暗い街を歩いていた。無音、ガソリン車の匂いすらしない街を街灯が照らしている。アスファルトを照らす中、優は思い出したように口を開く。 「……あのさ」「なんでしょうか」「これ、さっきから同じ場所歩いてない?」「そうですね。五度は同じ道... -
欲と男と女の話
斜向かいに座る男は美男子だ。美男子、という言葉ですら足りないほどに顔がいい。そして、イケメンという言葉ではチープすぎて物足りない。あらゆるイケメンアイドルや俳優を寄せ集めて、AIに学習させて描いたらこんな顔が出力されるんだと思わせる顔... -
元日に一年の計はありて
駅前の時計台には多くの人がいたが、栫井優の目当ての人物の周りだけ綺麗に開いていたため、特段苦労することなく探し出すことができた。これも単に相手の顔が良すぎるからだろう。人間、美しすぎるものには気が引けるものだ。 ライトベージュのトレン... -
流し見の走馬灯
title by 一人遊び。(http://wordgame.ame-zaiku.com/) 深夜、草木も寝静まる夜のことだった。明日は大学がなく、家族も朝から出かけることを確認した千種川雅貴は、今日が実験の決行日であると認識していた。 肉体と同期している精神を分離すること... -
美しい顔の主
title by 蝋梅(https://roubai.amebaownd.com/) ぐるるるる。 可愛らしい小型犬は、牙を剥き出しにして、喉を鳴らして唸り声をあげている。飼い主らしい老婆は、そんな愛玩動物にあらあらと困った顔をしている。 体勢を低くし、唇をめくって歯を剥き... -
無邪気時々悪魔
フランチャイズのファストフード店。その一角に優と千種川はいた。二人は一袋のフライドポテトをつまんでいた。 おもむろに千種川が口を開く。彼の口から、彼に似合わない単語が出てきたことに、優は手元のフライドポテトから視線を上げる。 「先日はエ... -
ディミヌエンド、ジ・エンド
title by scald(http://striper999.web.fc2.com/) 典型的なオタクファッションといえる、チェックシャツに褪せたジーンズ。大きな黒のリュックサック。毎日風呂に入ってはいるらしく、せめて清潔感があるのが取り柄だろうか。 大学内では、人が集まら... -
星の刻/レコードの上で
title by OTOGIUNION(http://otogi.moo.jp/) 昔、顔が良くて気になっている人が居た。 女遊びが激しくて、いつも誰も彼もを値踏みするような目で見ている人だったけれど、とにかく顔だけが好みだったのだ。 そんな人が、大学入学を控えて事故に遭った...