ハリエンジュの赤い星– category –
美男美女のゆるやかな現代ファンタジー
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ハリエンジュの赤い星
大輪の炎の花はまだ遠く、
「昨日は花火の日でした。ご存知でしたか?」「花火? あれって八月じゃなかった?」「はい、八月にもありますが、五月にもあります。厳密には、旧暦の七月ですが」「ああ、旧暦か。旧暦だと、日にちがズレるんだっけ」「はい。新暦、グレゴリオ暦は地球... -
ハリエンジュの赤い星
スーパールーナーエクリップス
「月食だって、今度の……いつだっけ」「二十六日ですね。二十時十一分ごろから十五分程度と聞いています」「へー。見れる時間、それだけなんだ」「はい。そのようです」 じゅずずずず。 シアトル系コーヒーショップの季節限定フラペチーノを啜りながら、... -
ハリエンジュの赤い星
毒花は可憐な小花と咲く
受け持っているクラスの生徒に、一人、ひどく目立つ生徒がいる。 どのクラスにも一人二人、良くも悪くもクラスの中心となる意味で目立つ生徒はいるものだ。しかし、彼女は中心になるわけではないが、外見が派手で、兎角目立つ生徒なのだ。 教師という... -
ハリエンジュの赤い星
生産的非生産行為
栫井優(かこい・ゆう)は、その外見から私服でいると学生に――未成年に見られることがない。制服でいても、時としてコスチュームプレイの一環だと思われるほどだ。 それもこれも全て、彼女の年齢不相応に熟れた肢体が原因だった。豊かに実った乳房と、... -
ハリエンジュの赤い星
色香のある女と人形のような男
栫井優(かこい・ゆう)はとかく派手な見た目をしている。男の平均身長はあるだろう高い背に日焼けした肌、アッシュグレイの髪には青いメッシュが入っている。ブレザーの制服はいつだって第三ボタンまで開けられていて、豊満な乳房が露出している。 ス... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート5
美しい肉体を廃棄する――肉体に死を与えることをけろりと言ってのける千種川に、もったいないけど生き残れなかったなら仕方ないよね、と優は返す。まるで他人事だ。 時刻は十八時を半分ほど回ったところで、二人はすでに夕飯を食べ終えていた。さすが高... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート4
「なんで来たのかは分かったし、どこから来たのかも分かったけどさ。気になってることがあるんだよね」「なんでしょうか。開示できる範囲であればお答えします」「あんたの身体と、その身体の元持ち主については話せる?」「ええ。話すことは可能です。千... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート3
「察していると思いますが、ぼくたちは人ではありません。いえ、正しくいうならば──地球人ではない、と言うべきでしょう」 機械的な声色を少し緩めて、美しい楽器のような声で語りかける千種川。怜悧な硬質なガラスのような声色が常の彼が、柔らかな――人... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート2
イスに腰を下ろして話しかけてくる千種川。クイーンサイズのベッドにあぐらをかいて座った優は、あー……と声を出すと、がしがしと頭をかく。考えがまとまらないと言わんばかりの様子の彼女を、ただ千種川はじっと見つめている。まとまるまで待つつもりの... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート1
ちらちら、と見られていることには慣れている。どんなに訓練された人間であっても、目の前の男には視線を向けざるを得ないのだ。これはそういう外見をしているのだから。 紫がかった黒髪は、染めることなど一度もしたことがないような美しさだ。重たげ...