MENU
  • index
  • info
  • text
    • original
    • fanfiction
    • series
    • twitterss
  • offline
  • contact
  • memo
torpedo
  • index
  • info
  • text
    • original
    • fanfiction
    • series
    • twitterss
  • offline
  • contact
  • memo
torpedo
  • index
  • info
  • text
    • original
    • fanfiction
    • series
    • twitterss
  • offline
  • contact
  • memo
  1. ホーム
  2. 私とわたしの日々是好日
  3. コーヒークリーム・ソーダフロート

コーヒークリーム・ソーダフロート

2023 7/25
私とわたしの日々是好日
2023-07-25

「こうも暑いと何も食べる気にならないわね」
「まだ八月入ったばかりなんだけどね……こういう時こそ、アイスを食べて体を中から冷やすのはどうかな」
「あら、素敵だわ……ああ、でも甘いものを食べる気にならないわね……」
「ふふ、それならこれはどうかな」

 そういうと、ヴィンチェンツォは水出しのコーヒーをグラスに注ぐ。六割ほど注いだそれを、ソファーの上でくったりとしている絢瀬の前に置くと、アイスクリーム保管用の冷凍庫から一リットルアイスクリームとカレースプーンを用意する。
 カレースプーンで掬われたバニラのアイスクリームは、そうっとコーヒーがたたえられた水面に落とされる。少しだけ沈んで、コーヒーで表面を濡らしたアイスクリームが顔をのぞかせる。
 柄の長いスプーンをグラスに差し込んで、ヴィンチェンツォはどうぞ、と絢瀬の前にグラスを差し出す。起き上がった彼女は、素敵な飲み物が目の前にあるわね、と微笑む。

「甘くて冷たいわね」
「夏はアイスクリーム食べないとね」
「あなたは夏じゃなくても食べてるじゃない」
「夏はより美味しいからね」
「ふふ、それ、冬も聞いたわよ」
「こたつに入って食べるアイスは、冬の特権だからね」

 いつもおいしいってことじゃないの。そう絢瀬は笑いながらアイスをひとすくいする。文明の発展がアイスのおいしさをもたらしたんだよ、と釣られるようにヴィンチェンツォもまた笑うのだった。
 ヴィンチェンツォはヴィンチェンツォで、バニラアイスの上にチョコレートソースをたっぷりとかけているものだから、甘いものが苦手な絢瀬は、よくそんなものが食べられるな、と感心してしまう。胸焼けをしないのだろうか、と尋ねようと思ったが、前においしいよ、と不思議そうな顔で見つめられたことを思い返す。きっと今回も同じように戻ってくるだろう。それに思い至り、絢瀬は少し遠い目をしてしまう。
 彼女の思考が外に飛んでいることなど、つゆも知らないヴィンチェンツォは、メッセージアプリを立ち上げる。数日前に画像付きで送られてきたメッセージは、絢瀬の妹のものだ。

「ナナミのこれ、私もやりたいんだよね」
「奈々美の? ああ、あのパンケーキね」
「絶対おいしいよ。だって、ホイップクリームにバニラアイスにチョコレートソースだよ? 完璧じゃないか」
「何が完璧なのかはさておいて、だわ……とても甘そうで、あなたが好きそうだなとは思ったわ」
「ホイップクリーム買ってきていいかい? あれがあれば作れるんだけれど」
「その前に食べかけのアイスは食べちゃいなさい」
「分かってるさ! 溶けたアイスほど悲しいものはないからね」

 夕飯の買い出しの時に一緒に買ってくるつもりだよ、とにこにこ笑顔のヴィンチェンツォに、わたしの分はいちごにして、と絢瀬は頼む。もちろんだよ、と笑ったヴィンチェンツォは、今日のリクエストはあるかい、と尋ねる。

「さっぱりしたもの、ってなっちゃうわ。酢の物が食べたいし、でも塩っぱいものも食べたい気分だわ」
「いろいろ不足していそうだね? タコとわかめの酢の物と、フライドポテトなんてどう?」
「素敵だわ。フライドポテトがあるなら、わたしお米は控えめがいいわ……」
「わかってるとも。あ、そうだ。お刺身なんてどう? 最近食べてないし」
「いいわね。フライドポテトとは相性が悪そうだけど」
「たまには相性が悪いものでもいいじゃないか。冒険心も大事だよ」
「目に見えてる失敗の罠は踏みたくないわね」
「それもそうだね。じゃあ、タコの唐揚げにするかい? 塩を振ったらおいしいと思うよ」
「そうね。あなたが揚げ物を作ることに抵抗がないなら、それがいいわ」
「私は全然平気だよ」

 おいしいものを作ることが嫌だな、って思うことは少ない方だと思うよ。そう笑ったヴィンチェンツォに、絢瀬は手抜きをしたい日だってあるでしょ、と苦笑する。

「そういう日は最初から手抜きだよ。サラダをカット野菜で済ませちゃうし、お金で解決できることはお金で解決しちゃうよ」
「そんなものなのかしら」
「そんなものじゃないかな。洗い物が増えてもいいから、便利な調理道具を使うとかね」
「どの道具が何に使われてるのかすら、わたしはわかってないわよ」
「だと思った」

 今度一緒に料理するかい。
 そうヴィンチェンツォに話を振られた絢瀬は、少し悩んでから手伝いだけよ、と微笑むにとどめた。それでも十分うれしいよ、とヴィンチェンツォはとびっきりの笑顔を浮かべた。

私とわたしの日々是好日
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • 世界は奇跡で満ちている
  • アイス・イン・ザ・スカイブルー

関連記事

  • 2022SS名刺メーカーまとめ
    2023-11-16
  • おいしいものはいくつでも
    2023-07-20
  • バニラホワイト・デイブレーク
    2023-06-28
  • 雨に溶かして、
    2023-06-13
  • お揃いが増えてゆく幸福
    2023-04-13
  • バレンタインより愛を込めて
    2023-02-14
  • 砂糖をもうひと匙
    2022-12-24
  • 砂糖にまみれた昼下がり
    2022-11-23

© 2006-2023 torpedo.