サンハ=ユアニルの麓にて– category –
筋骨たくましい男性たちのどたばた中世風ファンタジー
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奇跡はポーションの色をしている
「お、おはようございまーす……」「おう、来たな。マクシミリアンなら、リビングにいるぜ」「そうなんですね。わかりました」「俺よりも切り方がうまいとよ」 誇っていいぞ。そう、にっ、と口の端を吊り上げて笑うヴォルフガングは、罠見てくる、と彼らの... -
ハロー、ネバーランド
先日から、マクシミリアン=イルデブランドとヴォルフガング=ブラッドフォードの二人の家の近くに、風変わりな人物達が暮らし始めた。 その人物達は、いつぞや異世界から訪れたカナとユウタのような、国境沿いに存在するサンハ=ユアニルの街どころか... -
ファンタジスト・ロマネスク
若い竜が新たに本を書き始めた。 そう自宅までわざわざ足を運んでくれた壮年の竜――竜の壮年も若輩も老年も、ヨナグ族からすれば分からないのだが――から聞かされたマクシミリアンは、そうか、と頷いた。たしかに他の竜語(ドルンノード)の翻訳者よりは... -
今年の夏はこれで終わり
サンク・キタテウェルトの夏は短く涼しい。もとより、三方を山で囲われ、残りの一方だって海に面している国なのだ。ましてや、国境沿いの山にあるサンハ=ユアニルの街になれば、夏といえば短い季節だ。その代わり、冬はひどく厳しく長いのだが。 ……閑... -
カジュアル・トーキングタイム
メイナード=レンブラントの店は雑多なものがなんでもある。一般的な消耗品はもちろん、ちょっとした自室を華やかに見せるためのインテリア家具、魔法を操る制度を一時的に高める薬や、眠気覚ましなどもある。もちろん、薬品に関しては相応の値段がする... -
ファースト・イーツ
新年を迎えたサンハ=ユアニルの山は雪で白く化粧をしていた。麓の街も白く染まっている。人々は思い思いに家の前や、屋根に積もり始めた雪を融雪溝に落としていく。 それは街から離れたところに住むマクシミリアンとヴォルフガングも同じだった。石と... -
スカーレットの色をした朝
マクシミリアン=イルデブランドは鍋を火にかけていた。 特に友人であるドルノ族たちの特有の言語、竜語(ドルンノード)で綴られた書籍の翻訳依頼があるわけでもなければ、製本の依頼があるわけでもない。至って平々凡々平和な日々だ。 季節は冬に入... -
サイハテトラベル7
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) 結果から言えば、異世界へ繋がっている疑惑のある廃教会のクリスタルは、ユウタとカナを元の世界に戻していった。 もう来られないかもだけど、と言いながら、また来られたら遊びに行きます、と二... -
サイハテトラベル6
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) 物は試しに、と満月の日を待つこと数日。その間もユウタとカナは文字の勉強をしたり、料理や物作りを手伝ったりして日々を過ごしていた。もし帰ることが出来なくても、文字はこの世界に滞在する上... -
サイハテトラベル5
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) 混み合いもひと段落ついたからか、ヴォルフガングがリーゼを手招きする。なんだい、と言いながらのしのしとやってくる赤毛のドーン族の彼女は、ユウタとカナを見ると、細っこいガキンチョだねえ、... -
サイハテトラベル4
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) 「えーっと……たしか、竹取の翁が光ってる竹を見つけるところだよね、多分、このイラスト的に」「だよね。めっちゃ木なのは、こっちに竹がないからなんだろうけど……あ、じゃあこの同じ単語は……木?」... -
サイハテトラベル3
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) サンハ=ユアニルの街から、青く背の低い草原を走ること四ラノラミゴ。そこにマクシミリアンとヴォルフガングの家はある。なぜそんなに離れているのかといえば、狩人として生計を立てているヴォル...
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