novel
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私とわたしの日々是好日
È come il miele.
ヴィンチェンツォはドライヤーで髪を乾かして終えると、ブラシで軽く整える。風量でもつれた髪をほどいてやると、ゆるくウェーブした髪がふわりといつものような髪型に戻る。垂れてくる前髪だけ、ヘアクリップで留めてやる。 無地の黒の寝巻きに着替え... -
私とわたしの日々是好日
綿菓子のように笑う
title by Lump(http://cogio.net/lump/) チョコレートの祭典、バレンタイン。とはいえヴィンチェンツォは、ただチョコレートを待つだけの男ではない。どちらかと言えば、贈りたい方の男だ。 親愛なる友人や、敬愛する職場の同僚や上司、そして最愛の... -
私とわたしの日々是好日
海棠の睡り未だ足らず
「ねえ、アヤセ。海に行かない?」「もう夜中よ。行ったところで、真っ暗で何も見えないわよ」 金曜日の夜のことだった。 二人、いつものように並んでソファーに腰を下ろしてテレビを見ていた。映画のテレビ放送を、時折あの料理おいしそう、とかそんな... -
私とわたしの日々是好日
ケーキはどちらだ
絢瀬は甘いものはそこまで好きではない。嫌いか、と問われれば、嫌いではない。そう答えはするが、好きかと尋ねられれば、そうでもない。そう、答える程度だ。要は、あれば食べるが、そこまで好んで食べないのだ。 それでも、まるで食べないわけではな... -
私とわたしの日々是好日
冬、こたつにて
「っあー……」 ちゃぽん。 半透明の赤い湯に左足から滑り込む。シャンプーもトリートメントも、全身をくまなく洗い上げた絢瀬は、湯船に全身を浸からせる。温かな湯に今日の疲労が溶けていくようだ。 思わず口から声が出る。絞り出すような声は、湯船に... -
私とわたしの日々是好日
君と僕とかっこいい生活
「ところでなんですけど、ヴィンスさん」「うん?」 巣鴨雄大(すがも・ゆうだい)に相談がある、と言われて仕方なしに終業後に居酒屋にきたヴィンチェンツォ。奢らないですからね、と早々に釘を刺されて、二人は居酒屋でちびちびと生ビールと枝豆をつま... -
私とわたしの日々是好日
その先に誰がいる
title by シャーリーハイツ(http://adam.mods.jp/ra/) 中途採用の正社員としてこの会社に採用されて、早いもので一年が経とうとしていた。だいぶ社内の空気にも慣れてきて、仕事も軌道に乗ってきた。後輩も出来て、教えることが増えて楽しいことばかり... -
私とわたしの日々是好日
愛に見惚れて
いつも通りの時間に目が覚める。アラームがなるよりも前に目が覚めるのは、もはや身体がこの時間に起きることを学んだからだろう。ヘッドボードのメガネを手にとり、絢瀬は大きく伸びをする。ゆるくまとめた髪紐をほどいて、今日の仕事内容を確認するた... -
私とわたしの日々是好日
おやすみの国の恋人へ
title by alkalism(http://girl.fem.jp/ism/) 縦にも横にも大きいヴィンチェンツォ・ガブリエーレ・フェッリーニは、ちょこんと床に胡座をかいて座ってもなお、はち切れんばかりにむちむちの筋肉が彼の大きさをより強調させていた。骨も太いので、余計... -
私とわたしの日々是好日
ぬくもりを持った雨雫
title by 腹を空かせた夢喰い(https://hirarira.com/) 終業後のバス車内は混んでいる。そりゃあそうだ。この時間は帰宅ラッシュの時間だし、道路だって車で道が混むのだから。そんな当たり前なことに、俺はうんざりしながら外を見る。天気は雨で、ざあ... -
私とわたしの日々是好日
砂糖水にローズマリー
title by そにどり(http://nightjarxxx.web.fc2.com/) チェックアウトの波が去って行って、一息吐くと、私は休憩にいかされる。朝の混雑を乗り切った私は、コンビニで買ってきたたらこのおにぎりを頬張りながら、ローテーブルにつっぷしていた。今日の... -
私とわたしの日々是好日
TV
その日は一日中雨が降っていた。ざあざあ、というには少し弱く、しとしと、というには少し強い雨だった。 在宅勤務のヴィンチェンツォは、帰りに同棲している絢瀬に牛乳を買ってきて貰おうと思っていたが、申し訳ないから止めておこうとスマートフォン...